レッドブルエアレースを見て思う荷重倍数
基礎訓練において、飛行規程 第2章に登場する荷重倍数限界の数字は誰もが覚えるものです。
一般的に、N類の正の荷重倍数限界は3.8Gです。
これについてよくある質問としては
「水平旋回で何度BANKで3.8Gになるか」ですが、
これはCOSの逆を取れば約75°BANK、と簡単に求められます。
EXCEL計算式はDEGREES(ACOS(1/3.8)) = 74.742
口述試験ではこれ以上深くは聞かれないでしょう。聞かれたとしてもVa(設計運動速度)との関係性くらいでしょうか。
さて、レッドブルエアレースの中継を見ていると、各マニューバーにおいてその時のGが表示されます。特に宙返りの時には上限ギリギリまでGがかかっていることが分かります。
それでは、BANK0で3.8Gになるにはどれ程のCLIMBが必要となるのでしょうか。
計算してみると、
3.8G = 3.8 * 9.8 m/s^2 = 3.8 * 32.17 ft/s^2 = 122.246 ft/s^2 となります。
つまり1秒間でLEVELから122ft/sの上昇をすれば3.8Gがかかります。
昇降計の単位に直すと、
1秒間で0fpmから7320fpmとなる様な上昇をすれば3.8Gがかかることがわかります。
平気で9~10Gがかかるエアレースは凄まじい世界だということがよくわかりますね。
25°BANKの旋回半径
今度は標準率旋回(3°/秒)ではなく、
25°BANKの旋回半径についてです。
TAS/100 - 0.8 [NM] で求められます。
(例)
TAS140KT → 1.4-0.8 = 0.6NM
TAS200KT → 2.0-0.8 = 1.2NM
RULE OF THUMBとしていつでも使えるようにしておきたいものですね。
学科試験の手続きから見る、日米の航空行政の差
「学科試験を受験する」
この1フレーズの行為のために発生する必要な作業が、日本とアメリカで随分違うなと感じたので、まとめてみました。
日本で航空局の学科試験を受験する場合 (事業用・海外ライセンス保持者) |
アメリカでFAAの学科試験を受験する場合 |
---|---|
試験日を待つ(事業用の場合年6回開催) | TSAに登録 |
鳳文書林から学科試験申請用紙一式を取り寄せる (389円+送料) |
コンピュータテストを実施しているスクールで受験 (24時間365日受験可) |
手元に届くのを待つ | その場でスコア発表と受験料引き落とし |
申請書を記入する(鉛筆で) | |
納付書を記入する(ボールペンで) | |
郵便局に行く | |
手数料分の収入印紙を買い、貼りつける(5600円) | |
切手を2枚買い、貼りつける(82円×2) | |
自分のライセンス返送用書留封筒を買う | |
全てを同封し航空局に送付する | |
ライセンスが書留で返送されるのを受け取る | |
試験2~3週間前に受験票が届く | |
証明写真を準備し受験票に貼りつける | |
受験票をもって試験当日、受験する | |
2~3週間後に結果通知が届く | |
(受験を思い立ってから合否まで:最大3カ月) | (同:1日) |
アメリカでは既に完全ペーパーレス化・オンライン化が実現している一方、
日本ではいまだに鉛筆・のり・収入印紙・封筒が必要となっています。
AirSpeedのトレンド
計器のクロスチェックについて、教官からよく言われるフレーズの一つに
「速度計のトレンドを見よ」というものがあります。
同じ90KTでも、加速しつつある90KTなのか、減速しつつある90KTなのか、
90KTで落ち着きつつある状態なのか、ということですね。
TGL・エアワーク・マニューバにおいては特に重要な要素となってきます。
ここでトレンドとは一体何を示しているのかよく考えてみると、
高校数学の微分がイメージできます。
トレンド = 時間あたりの変化量 = 時間tで微分した結果
と言い表せるのではないでしょうか。
座標 | 時間1回微分(速度) | 時間2回微分(加速度) | |
---|---|---|---|
水平位置の情報 | なし | ASI(速度計) | なし |
垂直位置の情報 | ALT(高度計) | VSI(昇降計) | なし |
(参考)旋回方向の情報 | - | Rate of turn indicator |
このように整理することができます。
(こうしてみると改めて飛行機というものはどこを飛んでいるか分かりにくいものだと再確認)
まとめると、
ALT(高度計)にはそのトレンドを示すVSI(昇降計)がついているが、
ASI(速度計)は既に水平位置(空気の塊に対してどれだけ移動しているか)のトレンドを示しているものなので、更にそのトレンドを掴むのは難しいが重要である、ということが見えてきます。
車のカタログでは0-100km/h加速の数値というものがあるそうです。
(車は全然詳しくないですが)
これはまさしく加速度を示していますね。
例えば「0-100km/h加速が5秒」だと、
→「20km/h/s」→「20km/3600s^2」→「56m/s^2」
となります。
AirSpeedのトレンド(加速度)をイメージしてフライトに臨んでいきたいです。
表作成:
METARにおけるBR,FG
気象の座学でMETARの解読を勉強する際、
BR:視程1000m以上5000m以下の場合に使用される
FG:MI,BC,PR,VCの場合を除き最短視程が1000m未満の場合に使用される(AIM-J 811より引用)
と学びました。
漠然と、
「視程5000m未満で飛行場はIMCになるので、
BRが通報されていたら ほぼIMCと判断できるな」
という一つの判断材料として考えられそうですが、
(※ほぼ と書いたのは視程5000mちょうどの場合があるので)
日本列島を寒冷前線が通過する今日、ふとMETARを見てみると、
RJBE 170000Z 05006KT 8000 -RA BR FEW008 SCT020 BKN060 09/07 Q1017
とあります。
卓越視程が8000mあるのに、BR(視程1000m以上5000m以下)が通報されています。
BR(視程1000m以上5000m以下)…ここでいう視程とは卓越視程ではない何か別の視程であることが分かりました。近日中に詳しく調べたいと思います。
◆METARにしばしば登場する略語の読みと意味を復習しておきたいと思います。
(なぜところどころフランス語が登場してくるのか、ご存知の方いましたらコメントして頂けると幸いです)
以上、自分の備忘録として。また誰かの役に立てば幸いです。
参考サイト: